あなたにはおじいさんがいますか。あなたのおじいさんはどんな方ですか。おじいさんと言えば、自分のお父さんかお母さんのお父さんで、誰にもいるはずですけど、私にとっておじいさんは想像の中の存在だけでした。私のおじいちゃんは私が生まれるずっと前に亡くなって、一度も会えませんでした。小さい時から、おばあちゃんのうちへ行った時は、白黒写真のおじいちゃんを見て、私をかわいがってくれるおじいちゃんがほしかったです。だから、教会へ行って「神様、私は、おじいちゃんがほしい。私におじいちゃんを下さい。」とお願いしたほどでした。今、考えてみるとこういうことはできないはずのバカみたいなお願いでしたけど、私はいつか私のおじちゃんに会えることを強く信じていました。
私のこの願いが通じたのは、去年の夏休みでした。今、みなさんは、「どうやって亡くなったおじいちゃんに会うことができるの?」と。そして、これは、うそだと思っていらっしゃるでしょうね。実は、これは、うそではありません。私は、去年の夏休みにプリンストン大学の石川プログラムで日本に二ヶ月行きました。その時、ホストファミリーと一緒に住んでいて、本当の家族のようになりました。私は、今もホストファミリーじゃなくて、「私の日本の家族」と呼んでいます。私の日本の家族はおじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、妹三人の大家族でした。だから、私は、その時から、日本人のおじいちゃんがいます。私は、おじいちゃんがいるのがほんとにうれしくておじいちゃんをほんとのおじいちゃんだと思いました。今も、はじめておじいちゃんと会った時が忘れられません。
日本にはじめて行って、小松というホストファミリーのお宅についてから、お母さんから、御家族を一人一人紹介していただきました。その日、おじいちゃんはちょっと遅く帰って来て、うちに知らない人、つまり私がいるのを見て、びっくりしたみたいでした。「きみ、誰?」「ああ、はじめまして。ボラと申します。二ヶ月御家族にお世話になります。どうぞよろしくお願いします。」とていねいに挨拶したのに、突然、おじいちゃんは、「ボラ?」「はい、ボラです。」「きみ、うみからきたのか。ボラは魚の名前だぞ。」「ええ?」「ボラという魚は、大きければ大きいほど、高く売れる。君、背高いね。」
と言われて、その日から、私の名前は「さかなちゃん」になったんです。
こういうふうに私は、おじいちゃんとおもいしろいことがたくさんありました。というのは、私ははじめて日本へ行ったばかりだったから、その時、日本語があまりできなかったし、おじいちゃんは英語が全然できないし、お互いに誤解して笑った時もたくさんあります。
ある日、学校が休みで、うちで私がテレビを見ている時、おじいちゃんが私の
ところに来て、「きょう、あなた欠席するの?」といいました。私は、韓国人なので、それを聞いて、びっくりしました。おじいちゃんが私に悪口を言っていると思っていました。というのは、「けせき」というおなじ発音の単語は、韓国語では、ほんとに悪い悪口だからです。
おじいちゃんとしゃべる時は、いつも身ぶり手ぶりで話さなければなりませんでしたけど、私が日本語で話すのに少しずつ慣れてきて、私とおじいちゃんはすごく仲がよくなって何でも話せるようになりました。私はおしゃべりなので、いつも毎日何をしたか学校の日本語の先生がかっこよくてすきだということとかなどを、おじちゃんにマッサージをしてあげながら、しゃべりました。おじいちゃんは、日本の昔話とか戦争で中国に行った時の話などくわしく教えてくれました。
おじいちゃんとおばあちゃんと住んだことがなかった私はやっぱり大家族の方が核家族よりいいと思いました。最近はお年寄りと若い人の生活スタイルもちがうし、お年寄りと子供が別々に住むのがふつうですが、できれば、なるべく一緒におじいちゃんとおばあちゃんといっしょに住んだらいいと思います。いっしょに住んで不便なことももちろんありますけど、いいところもたくさんあります。
まず、おじいさんとおばあさんが子供の世話ができます。今の若い夫婦は二人で働いていて、子供の世話が大変です。両親が忙しいと、両親と長くすごしたい子供によくないです。そんな場合、おじいさんとおばあさんがこどもを見てくれたら家族の生活がうまくいきやすくなるんじゃないかと思います。
つぎに、一人で住んでいて、さびしいおとしよりにも大家族がいいと思います。今の社会はどんどん平均寿命が長くなって高齢社会になりました。そんなに長く生きることができるのに一人で住んだら、ちょっとさびしいんじゃないでしょうか。一人で暮らしていて、何か大変なことがあったらどうするのでしょうか。実は、残念なことでしたけど、私が日本にいた時、ホストファミリーのおばあちゃんが突然亡くなりました。私と家族のみんなはびっくりしてとても悲しかったんですけど、何といってもおじいちゃんがかわいそうでした。もう50年も結婚していて、ある日、一人になってとてもショックをうけました。その時、他の家族がおじいちゃんといなかったら、おじいちゃんはもっとさびしくなっていたかもしれません。そんな悲しい時に、家族がみんな一緒にいてよかったと思います。
最後に、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に住んでいいところは、家族愛がもっと感じられることです。今の社会はストレスもいっぱいだし、多くの人が悪いことを経験しているようですが、うちへ帰って自分をいつでも愛してくれる家族は多ければ多いほどいいと思います。私もおじいちゃんの愛にとても感動したことがあります。夏休みのプログラムが終わって、アメリカに帰る時、おじいちゃんはなきながら、私の手に一万円をくれました。私が何度も「お金はもらえません。」と言っても、おじいちゃんは私がマッサージをしてあげたのがありがたかったし、ほんとに私をまごだと思っていたと言いました。その時、「これが家族のおじいちゃんの愛だ!」ととても感動しました。
私は、日本人のおじいちゃんと家族のように住める機会があって、とても幸運だと思います。今の社会が皆核家族になっても、一度でも短くてもおじいちゃんとおばあちゃんと仲良く住んだらどうでしょうか。
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